それから私と新井くんは

放課後の1時間…

マンツーマンで補習授業をした。

私は、教卓から

新井くんのためだけに授業をした。

教室に私の声が響いている。

新井くんは、私の授業を

真面目に受けて、ノートをとっていた。

放課後の二人だけの補習授業。

最近の私は、彼に対して

教師らしからぬ姿を

見せてしまっていたので

この時間で少しでも教師として

名誉挽回できている気がして

少しだけ安堵していた。

そしていよいよ、最終日…

やれるだけの事はできた気がする。

これで、新井くんも単位落とさずにすむ。

私は、ホッと胸を撫で下ろしていた。

「じゃあ、今日で補習授業終わりです。

新井くん、よく頑張ったね。

次は、赤点取らないようにしないとね。」

そう言って私は、黒板を綺麗にするために

新井くんに背を向けた。

「あ…あのさ…」

「……え、どうしたの?」

勢いよく振り返ると、彼が私の方を

見ていた。

教卓から彼の方を見ると

バチリと目と目が合う。

サラサラの黒い前髪の間から

綺麗な瞳が見えた。