腕時計に目をやると22時30分…

「…あっ、そう言えば…っ!」

明日の小テストまだ作りかけだった…。

マズイ……っ。

帰って、すぐお風呂に入って…

終わらせないとっ…!

さっきのプロポーズの余韻から急に

現実に引き戻され、私は少し焦りながら

歩くスピードも自然と小走りになっていく。

ポツポツ…

「…えっ?…雨?うそっっでしょ!?」

そう言えば、天気予報で夜中にかけて

激しい雨になるって言ってたかも…っ。

ザーッッッッ

「えっ、いきなり本降りに

なってきたっ…!」

今朝、バッグを変えたから…

折り畳み傘ないよ……。

コンビニで傘、買うっ…?!

でも…家、すぐそこだし…っ。

「仕方ないっ…」

ダッシュッするしかないな…。

私は、久々に走り出した。

しかも今日は、いつもより高いヒール…。

「……ついてない…なぁ。」

走り出して公園に差し掛かった時…

「おらっっっっ!

こいよっっ、ごらっっ!」

えっ?怒鳴り声??

「うらっっっ!!」

バシッッッッッ!!

何か…殴られているような音…っ。

気になった私は、公園の木と木の間から

そっと覗いた。

そこには、男達が入り乱れて

殴り合いをしているのが見えた。

「え…うそっっ。」

バシッ、バシッッ!!

何これ…どうしよう…殴ってる…!

それに、誰か倒れてる…。

つ、通報しなきゃ……。

「お前ら、もう終わりかよっっっ!!」

え、終わり…?終わったの?

私がもう一度、覗き込むと

雨に打たれ、びしょ濡れの

男が1人立っている。

その周りに5~6人くらいの

厳つい男達が倒れこんでいるのが見えた。

…あの人数を…もしかして1人で?

嘘でしょ…。

ヤクザの抗争じゃないよね?

これって通報していいのかな…っ。

「…逃げよう…っ。」

すみません…私…逃げます。

だって、無理…怖いよっ。

市民の義務なんて知ったこっちゃない…

教師だけどさ、これはさ…

関わらない方がいいに決まってる。

そう思って歩道に戻ろうとした時…

「にゃ~…にゃ~」

「…え、猫…っ。」

私の足下に一匹の子猫が甘えたように

まとわりついてきた。

「…にゃ~にゃ~…」

「…びしょ濡れじゃない…っ。

えっ…何か…赤いっ、血?」

もしかして、ケガしてるの?

「にゃ~…」

「…どうしよう…っ。」

ガサッ

え、今…ガサッって?

木を掻き分けるような音で

私が振り返ると

そこにはさっきの男が立っていた。