ピピピピピピピピピピピピピピ

携帯のアラーム音……

はっっ!

私……寝ちゃった??

「……新井くんっ!?」

新井くん…いない…よね。

いるわけないじゃない…

待ってるからなんて偉そうな事言って…

私……爆睡しちゃって、最悪。

「それより…

帰らなきゃっ、遅刻っ…。」

ガタッ!

私が急いで席を立とうとすると

奥の方から新井くんが歩いてきた。

「先生…。」

「……あ、新井くんっっ!

ごめんね、寝てしまって…

待ってるからなんて言って…

本当にごめんなさい。」

私が彼に頭を下げると…

「…本当になっ。」

そう言って笑う声が聞こえる。

私が頭を上げて彼を見ると

彼は、笑って私を見ている。

「怒ってないの?」

「何で?」

「だって、仕事終わってからわざわざ

来たんでしょ…。」

「あぁ…それね、いいよ、俺も寝たし。」

「…1時間?」

「……5時間。」

「えっっっ!5時間?

だって、仕事5時に終わるって……。」

もしかして…早くあがってくれたの?

「本当に…申し訳ない……。」

私は、もう一度彼に頭を下げた。

「先生…何か、面白いね。」

「……えっ?」

「じゃあ、俺…行くけど…

先生は?」

「私も行くっ!」

2人でファミレスを出ると

新井くんは、私の方を見た。

「あのさ……俺…行くから。」

「えっ?」

「学校に行くから。」

えっ……学校…?

「本当に?」

「うん…

なんか…説得されちゃったから。

だから先生、心配しないでいいよ。」

え……。

「弟達から、何を聞いたか

知らないけど…大丈夫だから。

俺はこれから何があっても

俺が親代わりするって決めてる…。

だから、もしそれで学校を辞めても

仕方ないって思ってた。

でも…まぁとりあえず…

できるだけやってみるから。

……じゃあ、今から朝飯作るから

行くわ。」

そう言って彼は背を向けると

走り出した。

「……あっ、新井くんっ!」

高校生に気を使われてるよね…

私…何をやってるんだか……。

新井くん……

私の事、きっと頼りないって

思ったんだろうな…

そりゃ、そうだよね、寝るなんて。

説得って…?

でも、学校…来るって言ったよね。

そしたら…新井くんの助けが

できるかもしれない。

彼を、もっと知りたい…。

ふと、さっきの新井くんの

笑顔を思い出す。

そう言えば…

寝ている間ずっと誰かの肩に

もたれ掛かってたような不思議な

感触がしたいんだけど…。

勝平とはちょっと違う…

筋肉質で硬い感じ…。

え……新井くん?

まさか…っ!

そうだ…

夢で新井くんが出てきたから。

それでかな……夢だよね。

新井くん、さっき初めて

先生って呼んでくれた。

私達は、先生と生徒…なんだ。

何だか変な気分…

出会いがあれだったからかな…。

チクッ……

え……何?

「あっ、私も早く家に帰らないとっ。」

私は、その胸のチクッ…が一体何なのか

わからないまま、家へと急いだ。