用意してあった荷物を抱え

校門をくぐろうとすると

後ろから少し低い掠れた声がする。

「…先生っっ…!」

私が、振り返るとそこには大好きな

優しい瞳をした彼が息をきらしながら

立っていた。

「…新井くんっ…」

「はぁはぁ…

帰るの早すぎっ…職員室に行ったら

もう姿ないし…っ…

焦ってむちゃくちゃダッシュしたっ…」

そう言って、私を見つめている光くん…。

昨日の今日で、こんなに走って…

肩で息するくらい…必死に走るなんて…

そんな彼を見たら…

そう思ったら…急に胸が苦しくて

堪らなく苦しくなっていく…。

「…もう…

怪我が悪化したらどうするのよ…。」

そう言うのがやっとだった。

これ以上…彼に見つめられたら…

私…ダメになってしまう。

「…怪我なんて、どうでもいい…」

そう言って彼が私の方に近付いてくる。

…ダメ…近付いてこないで…

私はとっさに後ろに一歩下がる。

そんな私の様子を見て彼は…

勢いよく私を抱きしめた。

バサッッ…

抱えていた荷物が勢いよく落ちる。

「…あ、新井くんっ…

な、何してるのっ!?」

ギュッッッ…

彼は、私を力いっぱい抱きしめていた。

「…待っててくれる?」