"「実は…

さっき、校長室に新井を呼んだんです。

新井自身に確かめるために…。」

「…はい」

「そこで、新井が…言ったんですよ。」

「…?」

「奥平先生を脅迫したって…」

「脅迫?」

「何度か暴力を振るったと…

だから、奥平先生は従っていただけで…

何の関係もないと…。」

「…暴力?…関係ない?」

「ウザくてムカついたから、脅かしたと…」

「…新井くんがそう言ったんですか?」

「…そうです。

だから、自主退学すると言って

行ってしまったんですよ…。」

「…そんな…全部、嘘です…違う…

新井くんは、嘘ついてます。

脅迫なんて…してません!」

「…わかってますよ…。

きっと…

奥平先生を守ろうとしたんでしょう…。」

「…知ってるなら…

どうして、止めないんですか?」

「…新井が私に頼んできたんですよ…

奥平先生を辞めさせないでくれと…。」

「…え…」

「…自分は、辞めても構わないけど、

あなただけは、辞めるのはだめだって…

こんなにいい先生はどこにもいないから

絶対…辞めさせないでほしいと

頼まれました。」

「…え、そんなっっ…」"




…………………。

ねぇ、新井くん…

私…全然…

いい先生なんかじゃなかったんだよ?

なのに何で、こんな嘘ついてまで…

私なんかを守ろうとして…

本当に、バカ…。

でも彼は…

新井くんは最初に出会った時から

本当に温かくて優しくて…

色々な物を守ろうとしていて…。

そして、私の事もいつも守ってくれた。

私…あなたを守れなかった。

あなたの先生なのに…

守れなかった…。

ドサッ…

彼の姿が見えなくなると…

私は門の前で力なく崩れ落ちて

泣いていた。

まるで幼い子供のように

人目を憚らずに泣いた。