「……ごめん、ごめんね…心配かけて…

本当にごめん…。」

私の頬を涙が伝う。

「…もう…ごめんじゃないよ…」

日向子が泣きながら私の顔を見る。

「ごめん…私……もう、無理なの。」

そう言って私は、今まで起きた事全て…

日向子に話した。

私…

今まで、こんな風に…

犠牲を払ってまで

何かを変えたいなんて思った事なかった。

流されるままだった。

もう流されてる事にすら気づかないで

ただ、与えられた物を受け入れて…

辛い事があれば、受け流して

特に、否定も肯定もなくて…

それが当たり前で…

これがずっと続くんだって思ってた。

とりわけ、辛くも苦しくもないし

怒りも悲しみにも鈍感になっていく。

とりあえず程々に楽しくて幸せならいい。

代わり映えはないけど、黙っていれば

何事もなくやり過ごす事ができた。

でも、あの日から…

この世界は一変していった…。

今の私の周りの景色は最高にキレイで

色鮮やかに色付いている。

…彼を守りたいって気持ちが強くなって

この手の中の大切な物を

手放したくないって本気で思った。

絶対に無くさないように…

私、全力で走って生きたい。

全力で幸せになりたい。

今の私が、全てだと思いたい。

私が話終わった時……

日向子は、私の顔をじっと見つめて

私の頬を優しく撫でた。

「……わかった…

紗和がそうしたいなら、私は何も言わない。

二人を見守ることにする。」

そう言って私を抱きしめてくれた…。

「……日向子…私…本当にバカで…

ごめんね。」

「本当…バカ…

何で、よりによって生徒の事…

バカなんだから…

でも…あの子…本気で紗和を好きだよ。

本気だからこそ、心配なんだけど…。

それに…謝るのは私の方だよ。

紗和がこんなに苦しんでたのに……

力になれなくて、責めたりして…

本当にごめんね…苦しかったね。

辛かったね……。

まさか澤山先輩が…

こんな事するなんて思わなかった…。」

「……ううん…勝平は、悪くない…

私が悪かったんだと思う…。」

私が首を振ると…

日向子が私をじっと見つめた。

「それは違うよ…紗和が悪いんじゃない。

確かに、誤解はあったかもしれないけど

紗和は、ちゃんと向き合おうとしたし…。

何より…どんな事があったとしても

暴力ふるうのは最低…

許されない事だと思う。

澤山先輩…最悪じゃん…幻滅だよ。」

「…日向子……」

でもね…

勝平は悲しくて仕方なかったんだと思う…。

悲しみが深くて…

苦しくて仕方なくて…

それくらい私…彼を傷つけてしまった。

「じゃあ、澤山先輩に

紗和が見つかった事、伝えるね…

たぶん、今もまだ捜してると思うから…。」

「……う…ん、まだ捜してるの?」

「…たぶんね…

あっ、大丈夫だよ…一人にしないから…

話し合いをする時…

私が一緒にいるから…。」

そう言って日向子は、私の手を握る。

「……ありがとう…でも、大丈夫…

私…ちゃんと話をするから勝平と…。」

「……一人で?」

「…うん」

「…わかった…

でも、何かあったらすぐに連絡してね。」

「ありがとう……」

そう言うと日向子は、勝平に連絡をした。

彼は、すぐにでも私に会おうとしたが

日向子が、後日改めて会うように

彼を説得してくれた。