「紅~っ!!」

仕事の帰りにアパートの周りを歩いて

捜してみたけれど…

やっぱり紅の姿はなかった。

もう…いないのかな…。

したかなくアパートの階段を

上がろうとすると…

「紗和…っ。」

後ろから急に、腕を掴まれた。

「…っ?」

振り返ると勝平が私の顔を見下ろして

立っていた。

「…勝平っ…!」

グイッ

勝平は私の腕を強く掴むと

無理矢理、階段を上がらせて

玄関の前まで連れてきた。

「…紗和…玄関、開けてっ。」

私は、首を横に振って、勝平の顔を

見上げた。

「私…どこか、外で話をしたい。」

「はっ、何で?」

「……ごめんなさい…」

「謝るんじゃなくて…理由は?」

勝平の顔が怖くなっていく。

「…あの…それは」

もう…二人きりは無理…。

そう言いたくても、うまく言葉が

出てこない。

バンッッッッ!

彼は持っていたカバンを

床に叩きつけた。

…まただ…っ…

私の知らない人が見下ろしている。

「…紗和…二人で話したいから

部屋にいれて欲しい。」

ガンッ!

勝平は、私の肩を突かんで

玄関のドアの前に押し付けた。

「…痛い…勝平…やめて…」

膝が震え出す。

「……紗和…頼むから…

俺の言うとおりにしてくれ…

この前は悪かった…

もう、乱暴はしないから…。」