「もうっ……

ダメだって言ってるのにっ…。」

そう言って彼の顔を見上げると

「ごめん…つい…。」

そう言って彼は私の手を優しく握る。

ドキン……ドキン……

胸がまた騒がしくなっていく。

私を見つめているその眼差しに

罪悪感を覚える。

「…っ。」

あぁ…私は…っ。

でも…今…この手を振りほどけない。

振りほどきたくない。

私は、この手を振りほどかなくても

いいの……?

繋がれた手をそのままにする理由を

一生懸命、探していた。

「……新井くん、私とあなたは

生徒と教師なんだよ。」

「……知ってる…。」

「……知ってたら、わかるよね?

こういう事はしちゃいけないの。」

「うん…でも…止めれない。」

「…えっ……」

「頭ではわかってても…

俺はもう…

紗和を好きになっちゃったから…。」

そう言って彼は私を優しい表情で

見つめている。

こんなに簡単でこんなに難しい事が

あるなんて…。

「……」

私の気持ちを知ってか知らずか

新井くんは可愛い笑顔を見せた。

「まぁ色々考えずに…

紗和らしくいればいいじゃん。」

「…私らしく…?」

「…俺が初めて見た紗和は…

いつも真っ直ぐ前を見て、輝いてた。」

初めて見た私…が…?

「あの日、あの笑顔を見れたから

俺…今まで頑張れたんだよ。」

「……え…。」

「…俺…

紗和に救われた生徒の一人だから。」

「…そんな…。」

…初めて言われた…。

今まで教師として、自分なりに

頑張ってきた…

でも、本当にこれでいいのだろうか…

私は、正しいのだろうか…

いつも自問自答していて不安だった。

それが、なぜか今…すごくホッとしてる。

少なくとも…目の前の彼にとって

役に立てたことに…

それがこんなに誇らしいなんて…。

「…あの日笑ってて良かった…。」

私は、彼の顔を笑って見上げた。

「やっぱ紗和には笑顔だな…。」

そう言って彼は嬉しそうに笑う。

彼といるだけで

私は、こんなに嬉しくなったり

ドキドキする。

心が温かくなって

素直な気持ちになれる。

運命…

本当にあったらいいのに。

そしたら何も考えずに彼のそばに

いられる…。

"いられる…?"

私…好き…なんだ?

うん…

もう、理由なんて考えられないくらい

好きなんだ。