「え…何で…何で嘘つくの?」

「嘘なんかついてない…。

もう、私に関わらないで…。」

これ以上…彼と、どうにもできないと

わかってるなら…

いっそのこと嘘をつい方が楽だ。

だから私は、彼の顔をできるだけ

冷たい表情で見上げた。

「……紗和」

「…さよなら…。」

「…本当に幸せ…なの…?」

「……うん。」

もう、何でもいい…

彼から遠ざからないと……。

私に拒絶され、彼の瞳の光が

暗闇に染まったように色を失う。

「…嘘だ…。

もし、俺が嫌ならもう何もしない…。

紗和が嫌がる事はしない。

だから、嘘だけは…つくなよ。

辛いのに幸せなフリするのやめろ…。」

彼の掠れた低い声が悲しげで

さらに掠れて聞こえる。

「…嘘なんてついてない…。」

そう言って彼から瞳をそらすと

背を向けて歩き出す。

もうこのまま…絶対に振り返らずに

行こう…。

「嘘だっ!何で嘘つくんだよ?

そんなの…らしくないじゃんっ!

俺が、嫌なら何でちゃんと理由を

言わないんだよっ!

紗和が…嘘つくのは嫌だ。

幸せなフリを見るのも嫌だ。

本当に今、紗和が幸せなら諦める…。

でも、そうじゃないってわかるから。

辛いの我慢してるってわかるから…。

俺は…絶対に諦めない…。

俺が生徒で紗和が教師なんて……

そんなの関係ない……っ。

ただ俺を、見てくれよ……。」

「………」

彼の声が私の背中に突き刺さる…。

振り返らない…。

「もし今……

俺が運命の相手だって思えなくても…

俺はそんなの全然、余裕で…勝つから。

これから、絶対に振り向かせて…

俺が運命の相手って思わずには

いられなくさせるからっ!」

…運命……なんて

「紗和…っっ

俺が…全力で守るからっ!」

「…………」

その時…