「やっぱ…紗和が好き。」

「…新井くん…ダメだよ…。

さっき、ちゃんと話をしたよね?

もう…

関わるの止めるって言ったよね?

なのに、どうして帰らなかったの?

どうして…この場所にいたの?」

私は彼を問い詰めるように言ってしまう。

「だって…全然違ったじゃん…」

「…え?違った……?」

彼は私の顔を覗き込むように

ずっと見つめている。

「紗和…本当に幸せなの?」

「え……。」

幸せ……。

私の幸せって…何だったんだろう?

今さっき、すべて壊れてしまった。

勝平から逃げ出してしまった。

勝平を裏切ってしまった。

私、もう戻れないんだ…。

それに…正直に白状すると

さっき新井くんに抱きしめられて

嬉しかった…

ドキドキしていた…。

…彼は私の生徒で

私は担任教師なのに…。

それなのに彼を意識している…。

生徒以上の感情を持っている。

あってはならない…事。

絶対に許されない事なのに…。

「…紗和…?」

彼は私の顔を不安そうな瞳で見ている。

黒くてサラサラの前髪が少し目かかって

その前髪の隙間から覗く瞳が

あまりに綺麗で直視できない。

「…紗和…本当の事を知りたい。」

「もう…紗和って呼ばないで…。」

「え…?」

こんな…

汚れた私をそんな純粋な綺麗な目で

見つめないで。

「私は…本当に幸せだから。

これ以上、もう話す事はない…。」