「何でずっと泣いてるの?」

彼の指が私の涙を軽く拭うように

ゆっくりと頬をなぞった。

「…え…それは…」

「そんな悲しそうな顔で

泣いてたら、こうしちゃうからな…」

ギュッッ……

その瞬間…

私は、新井くんの腕の中にいた。

えっ…

「え…ちょっ…ダメ…っ。」

ギューッッッ…

そう言うと彼はもっと強く抱きしめる。

彼の息が首にかかって体が一気に熱くなる。

「…ダメ…新井くん…っっ…」

もう、クラクラして

立っているのがやっとだった…。

それでも…必死に私は彼の腕の中でもがく。

もがけばもがくほど、新井くんの胸に

顔が埋まっていく…。

彼の匂いが、身体中に駆け巡る…。

もう…ダメ…っ。

「…は…離して…」

目の前がクラクラして

身体に力が入らない。

「…いっ…やっ…本当に……」

その瞬間…

新井くんは私を離すと、優しく肩を掴み

私の顔を覗き込んだ。

「……泣き止んだ?」

そう言うとイタズラっ子のような顔で

私を見つめていた。

「え……」

私は、10も歳の離れた男の子の顔を

耳まで真っ赤にして見上げていた。

「ぷっ…また、そんな顔する……」

そう言って彼は私の顔を見つめながら

優しく微笑んだ。

…私、完全に翻弄されてる…。

「……そんな顔って…っ?」

「……だからその顔…反則っっ…

そんな顔されたら…我慢できなくなる。

だって…可愛いすぎ…。」

「…え……っ。」

私の顔は、もうこれ以上ないくらいに

真っ赤になってしまっていた。