「……うん」

「…あの人が好きなんだ?」

私は、勝平が……好き。

「……………うん」

「…そっか…」

「…………………………」

それが一番いいから…。

「もし…もし俺が…

あの人みたいに大人で

すぐにケンカなんかしなくて…

そしたら…

俺の事、好きになってくれるかな?

俺…今は、何もできなくて

紗和の事、不安にさせたり

心配させるばっかだけど…

でも…

これからちゃんと大人になるから…

ちゃんとした大人になるから…。

今の俺は何も持ってないし

すぐにあの人みたいには

できないかもしれないけど…

紗和が好き…。

この気持ちだけは絶対に負けない。

だから…チャンスがほしい。」

いつも私に正面からぶつかってきて…

正直で…素直で、ちょっと不器用で…

ハラハラと危なっかしくて…

でも、どこか憎めなくて…

優しくて…嘘がない人。

新井くんが勝平みたいだったら…

新井くんじゃなくなっちゃうよ。

新井くんのいい所…無くさないで。

ずっと、あなたのままでいてほしい。

もう、これ以上は傷つけられない。

ちゃんと…さよならしよう。

「…私、新井くんを好きにはならない。」

「やっぱ…俺じゃあ、ダメってこと…?」

「…うん、ダメ…全然ダメ…。

それに私…年下は、好きじゃない。」

これ以上、気を持たせては駄目。

……私、あなたの先生だから。

「…そっ…か…ダメ…」

彼の声が少し震えている気がした。

「…私は彼が好き…それに大切なの…

ずっと私を大事にしてくれたから…。

私も彼を大事にしたい…。」

そう言って新井くんを見ると

彼は、私を優しく見つめていた。

…その瞳は今までの中で一番だった。

優しい…とびきり優しい瞳をしていた。

え…何で…そんな顔で見るの…?

私…あなたを傷つけたのに…

胸に、ズキンと痛みがはしる。

どうしてこんなに悲しくなるんだろう…。

「……新井くん?」

「先生…お幸せに…。」

先生……