普段あまり人の通らない、私自身もどうしてこんなところに居るのか分からないような場所にまで来た。
部屋の施錠管理はしっかりしていて、うっかり入れるような部屋は一つもない。
私は廊下の壁にもたれて、座り込んで 涙を流した。
何がそんなに苦しいの?
透哉が言うことは 事実じゃない。
もう、私と透哉は別れた。
私が受け入れなかったとしても、そのことは現実として 私に付きまとう。
足音が無駄に響く。
誰かが こちらに向かって来ていることは分かった。
私は気付かれたくなくて、蹲って 顔を隠した。
「どうした?」
そんなちっぽけな願いは叶わず、話しかけられてしまう。
兎も角、私は首を横に振る。
「何もないです」



