中へ入ると、今度は案内係だという女性がわたしを出迎えてくれた。

「どうぞこちらです」

彼女が開けたドアを通ると、中には数人の人が椅子に座っていた。

「ようこそ。千歳さん。わたくしは、seiyaのマネージャーをしている、藤田、と言います。さあ、こちらに座ってください」

彼の言うように腰掛けると、少ししてからseiyaさんが来ると伝えられた。



ほんの数分のことなのに、凄く長く感じられた。

「お待たせ。千歳さん」

seiyaさんは言いつつ、わたしの向かいの椅子に座った。

「早速だけど、今回の用件は?」

「ええ。実は、今度新曲を出そうと思っているのですが、その許可を、取りたいなと思いまして…」

「…許可?」

彼は何のことだか分からない風に、首を傾げた。

「あの、10年ほど前に、『大村楽器店』で、作曲の相談をされたこと、ありませんか?」

「…ちょっと待って」

少しの間考え込んで、

「もしかして、文化祭でどうのって言ってたこと、かなぁ?」

「はい!わたし、その時の者なんです…」

彼は大きく目を見開き、わたしの顔をまじまじと眺める。

「そうだったのかぁ。気づかなかった…」

小さく笑って、彼は何度も頷いた。