「あとさ、千歳。俺、1つ隠してることがあるんだ」

「何?」

彼はポケットから、取り出したそれを見せて来た。

ペンダントだった。

「見覚え、ないか?」

「…」

「10年前、これを俺にくれたよな?それで、『歌手になる』って、約束したよな?」

わたしの視界はボヤけ、雫が膝の上に溢れ落ちた。

「健ちゃん、だったんだね」

「ああ」

わたしは涙を拭い、

「…でも、なんで」

鼻の詰まった声で訊いた。

「信じられないかもしれないけど、俺は、別の星から来たんだ。10年前も、今も」

「え?」

「10年に一度、1ヶ月だけ、こっちにこれるんだ」

頭が付いていかない。

「千歳、本当にありがとう。もう、星に帰らないといけない」

彼が言うと、くすんでいたペンダントが物凄い光を放った。

「じゃあ、元気で。また10年後」

彼が言い切ると、さらに光が増して、わたしは目を閉じた。



目を開けると、彼はもう、いなかった。

わたしはたった1人で、立ち尽くした。

「マリオネット」の楽譜を持ったままで。