「今日の服、可愛いね」

信号待ちで並んだ時、言ってみた。

彼女はさりげなく華やかな、「初めてのデートだったらこれくらい」という感じの装いだった。

「…ありがとう」

照れたように言う。

信号が青に変わり、人の波は再び動き出した。



「ここ」

指差しながら、声を掛ける。

「わぁ、すごい。趣ある!」

彼女が少しはしゃいだ声を上げる。

『南町昭和映画記念館』という名のそこは、読んで字の如く昭和風の外観だ。

近代的ビルの間に挟まれて、そこだけ時代に取り残された感じがする。

「じゃ、入ろ」

「うん」