イジメ返し3

「――何の騒ぎ?」

玄関扉が開く。顔をのぞかせたのは美波だった。

「……アンタ、うちにいったい何の用?」

「美波ちゃんのほうがよくわかってるでしょ~?」

全てを悟ったような表情を浮かべた美波はそのままカンナの前まで歩み寄った。

「ちょっと、ママ。それどうしちゃったわけ?赤くなってるじゃん」

「……別に。ちょっとね」

カンナにつねられたと美波に言うのをプライドが許さなかったのか、美波の母親はプイっとそっぽをむいた。

そんな二人の会話に割り込むように、カンナは右手を差し出した。

「ママの写真、返して」

「ハァ?アンタのママの写真なんて知らないから」

「嘘。学生証から抜いたでしょ?カンナ知ってるんだから」

「あたしのこと疑うわけ?証拠もないのに?」

「持ってるのは分かってるの。早く出して」

「そんな上から目線で命令されて、従うやつがいると思う?」

「え?」

「人にものを頼む時にどうするか、ママに教えてもらわなかったわけ~?」

美波は人を小ばかにしたような言い方をする。

「じゃあ、どうしたらいいの」

「誠意ってものを見せてもらわないと」

「誠意……?」

首を傾げる、美波と美波の母親は目を見合せて笑った。

「美波、カンナちゃんにはバーベキューの片づけを手伝ってもらえばいいでしょ」

「……片付けぇ?」

「そろそろ終わりそうだし、ちょうどいいか。アンタ、やりなさいよ。そうしたらアンタが欲しい物返してあげる」

「っ……」

ママの写真を返してもらうまでは美波に従う必要がある。

力ずくで取り上げるのは得策ではない。

「……で、やるの?やらないの?どっちよ」

あまりに理不尽な美波の言い草にこめかみが怒りに引きつる。

「3秒以内に決めて。あたし、忙しいんだから。はい、いーち、にーい」

写真は自分が盗んだと言っているようなものなのに、更に誠意を見せろ?

盗まれた被害者がどうして盗んだ加害者の顔色を伺う必要があるの?

そんなの理不尽すぎる。

許さない。絶対に、許さない。

今だけはせいぜい優位に立っていると思っていればいい。

今、この瞬間だけは。

「分かったよぉ。やるよ。片付けやりますぅ」

カンナは駐車場の上に落ちていた汚い軍手を拾い上げて手を通した。