イジメ返し3

「カンナもちょっとお手洗いに行ってこようっと」

スッと席から立ち上がる。

この学校には美波以外にもう一人、知っている子がいる。

その子に会いたかった。

「トイレの場所分かる?一緒に行こうか?」

「ううん、大丈夫。ありがとう」

そう笑顔で告げると教室を出て、隣のクラスを覗き込む。

複数の女子グループがそれぞれの場所で固まり楽しそうに会話をしている。

いない。あそこにもいない……。

順番に目で追っていたとき、ふと廊下側の一番前に座っていた生徒に目がいった。

黒い髪を一つに束ねて、自分の世界に没頭するように本を読んでいる女子生徒。

「桃ちゃん?」

こんなに近くにいたのに全然気が付かなかった。

本に集中しているのかカンナの呼びかけに気付かない。

「もーもーちゃーん!」

もう一度名前を呼ぶと女子生徒は顔を持ち上げてカンナを見た。