「ねぇ、カンナ」
美波はクラスメイト達から死角になるように腰を下げて、カンナと同じ目線になった。
目と目が合う。どす黒く濁ったドブの様な瞳。
「死ねよ。アンタのママみたいに」
そう言ってクスッと笑った美波は悪魔のようだった。
人の死を何とも思っていない。
ママを亡くしたカンナに対して何の感情も持ち合わせてなどいない。
それどころか、美波はカンナの一番弱い部分をついて、煽ってきた。
いったい誰のせいだと思っていの……?
ママが死んだ原因が誰のせいかしっているくせに。
それなのに。
カンナは真っすぐ美波を見つめた。
「まだ、死なないよ」
「ハァ?じゃあ、いつ死ぬわけ?」
「それはまだ決まってないよぉ。美波ちゃんにカンナの生死を左右されたくないもん。それにね、そんな権利美波ちゃんにはないんだから」
こうやって中学時代も里子ちゃんを追い込んでいったのかもしれない。
暴力を振るい、そのあとキツイ言葉で相手を打ちのめす。
暴力を振るわれた人は自尊心をひどく傷つけられる。
大勢の目のある教室内でならなおさら。
他人にイジメられている現場をみられるのはきついものだ。
美波はイジメの天才だ。意識せずにどうやったら相手を追い込み、ひどく傷付けられるかよくわかっている。