イジメ返し3

「ちょっと移動しようか、おっさん」

翔平に肩を組まれたまま、人影のないところまでくるとおじさんは観念したようにポケットの中から取り出した財布からすべての札を抜いて差し出した。

「チッ、2万だけかよ。アンタ、嫁にそれしか小遣いもらえないわけ~?空しい人生だなぁ」

おじさんの財布に残金がないかまできっちり確認したとき、おじさんの財布から何かを引っ張りだした。

「娘がいんのか?おっさんに似てぶっさいくだなぁー!つーか、父親失格のアンタにこんな写真持ち歩く権利ねぇな」

「や、やめてくれ!」

必死に手を伸ばしたおじさんの手をはたき落とすと、翔平は写真を躊躇なく破った。

写真が粉々になると、翔平は地面にその写真を投げ捨て足で踏みつけた。

おじさんは翔平の足を避けながら必死になって写真を拾い集める。

「今度からは気を付けろよ。未成年と遊ぼうとするのはリスクが伴うってことちゃんと覚えておけよ」

翔平から解放されたおじさんは弾かれたように逃げ出した。

その後ろ姿は情けないほどに小さくて惨めだった。

おじさんに罪はある。でも、その子供達には罪はない。

写真を破り捨てる必要などなかった。

お金をおじさんから巻き上げた後にやった翔平の行為は自分の鬱憤を晴らすための行為にすぎない。

「これ、どういうこと~?アプリってなぁに?」

尋ねると、美波がふふっと笑った。

「出会い系のアプリ。あのオヤジから連絡が来て18時にここで待ち合わせしたの。17歳、カンナでーす!パパになってくれませんか~?ってメッセージ入れたらあのバカ飛んできたわ」

「ひどいなぁー。そのためにカンナをここに呼び出したの~?しかも、待ち合わせ18時だったんでしょ?カンナすごい長い時間待ったんだから」

「しょうがないじゃない。アイツが早めに来るかもしれなかったし。もしアンタが遅刻でもしたら計画が全部水の泡になっちゃう」

悪びれもなくそう言い切った美波は翔平の手にある2万をすっと奪った。