イジメ返し３

「……君、カンナちゃんだよねっ？」

すると、突然見知らぬ中年のおじさんがカンナの肩を叩きながら顔を覗き込んだ。

「いやいやぁ、まさか本当に会えるなんてねぇ～！」

額の汗を青いチェック柄のハンカチで拭うおじさんの息は生臭くて、思わず顔を背ける。

センスがいいとは言えない着古したスーツに斜めがけのビジネスバッグ。

お腹はタヌキのように膨らんでいる。

「おじさん、誰？カンナにおじさんみたいな友達いないけど」

「ひどいなぁ～！そんな冗談を言うなんて！ほらっ、１８時から約束してたでしょ？」

「１８時から？」

「そうそう。駅前のパン屋の前。それにしても、びっくりだよ！こんな可愛い子と遊べるなんて！まるで天使みたいだ！」

おじさんは今にも飛び上がりそうな勢いで喜ぶ。

「さぁ、どこへ行こうか？おじさんがなんでもごちそうしてあげるから！」

調子にのって肩まで組んできたおじさんの左手薬指には銀色の指輪がはめられている。

「おじさん、こういうこといつもやってるのぉ？家族が可哀想だよ～」

おじさんをさとしていると、前方から歩いてきた見覚えのある顔が目についた。

あぁ、そういうことかぁ。

すべてを悟った瞬間、体の熱がスーッと冷めていくのを感じた。