イジメ返し3

「そっか。それでまだ里子ちゃんのパパとママは美波ちゃんの家の後ろに住んでるんだね」

「うん……。引っ越したくても引っ越せないんだと思う。あの家にはきっと里子ちゃんとの思い出がたくさんつまってるから」

「……その気持ち、カンナもよーくわかるなぁ」

今、カンナはママが亡くなったあの家に戻ってきた。

ママが自殺したあの家を売りに出すという話は何度も持ち上がっていた。

一等地に建つ広大な土地は億単位で売れるらしい。

でもこの家だけは何が何でも手放したくなかった。

ママと過ごしたこの家には楽しかった思い出がたくさん詰まっている。

誰にもさわれない、カンナとママだけの綺麗な思い出。

あの家にパパはほとんど帰ってこない。

たまに帰ってきてはカンナの機嫌を取るように「欲しい物はあるか?」と聞くだけ。

『ほしい物なんて何もないからママにもう一度会いたい』

カンナがそう言うと、パパは困った顔をする。

そんな顔を見る度に、苛立ちと激しい失望を覚える。