イジメ返し3

「どういうことぉ~?」

「美波ちゃんも美波ちゃんの家族も怖いよ……。あれ、見て」

桃ちゃんはその場に立ち止まると、目の前の住宅を指さした。

「ここ、美波ちゃんの家なの」

新興住宅地に建つこげ茶色の洋風な造りの一軒家。

建売なのかもしれない。

同じような形とデザインの家が立ち並んでいる。

幼稚園時代は賃貸アパートに住み、その後マンションに移ったはず。

最後に移り住んだのがこの家か。

でも、なぜだろう。

どこにでもあるはずの一軒家に妙な違和感を感じる。

その原因に気付く。カンナは桃ちゃんに尋ねた。

「どうして、美波ちゃんの家の周りだけ売り出し中になってるの?」

美波の家の両隣は玄関扉に【内覧随時受付中!】という看板がつけられている。

「この辺りだと有名なの。美波ちゃんの家。モンスター一家って呼ばれてる」

「そうなのぉ?」

「勝手に外の水道使われて車洗われたり、道路を塞ぐように駐車したり。夜中に友達を呼んで騒いだりバーベキューしたり……。典型的な迷惑家族だったの。それを注意した隣人に嫌がらせしたんだって。それでみんな逃げて行っちゃった」

「でも、美波ちゃんの後ろの家だけはまだ残ってるんだね」

美波ちゃんの家の北側は旗竿地だった。

家のすぐ横にお隣さんの私道があり、その奥に家がある。

「あの家に住んでた子、私達と同い年だった」

「だった、っていうのは?」

「自殺したの。美波ちゃんのせいで」

桃ちゃんは今にも泣きだしそうな表情を浮かべる。