カンナのイジメ返しは成功した。

でも、その成功の裏にはたくさんの代償や犠牲を払ってきた。

罪のない人間を傷付けもした。

カンナのやってきたイジメ返しという行為は正当化してはいけない。

イジメ返しをするということは、相手だけではなく自分をも傷付ける。

イジメもイジメ返しもその行為によって得られるものはなにもない。

破滅へ一直線だ。

桃ちゃんの言う通り。きっと相手よりも幸せになることが一番の復讐だ。


イジメが起こらなければ、イジメ返しなど起こるはずもない。

安易な気持ちで人を傷つける人間がいなくなれば、

きっと未来は明るく光り輝く。


カンナのイジメ返しはこれで終わりだ。

いつかは誰かがこの負の連鎖を断ち切らなくてはいけない。

それに気付けるかどうか、それはきっと自分次第。


親指に力を込めた瞬間、全身が熱風に包み込まれる。


目の前に炎が広がり揺らめき、部屋中をオレンジ色に染める。

ああ、やっぱり焼死は苦しいかもしれない。

乾いた咳が止まらず、喉の奥がヒリヒリと痛む。

苦しい。苦しくて仕方がない。

でも、カンナはそれだけのことをしてしまったんだ。

きちんと代償を払おう。

「ママ、カンナも今行くね」

ママが自殺したソファに寝転び、写真をギュッと抱きしめる。

窓ガラスが物凄い音を立てて割れ、カーテンに炎が引火して瞬く間に部屋中に炎が広がる。

目を閉じると、ママの声がした。

『カンナ、こっちよ』

ママが手を差し伸べている。

この先にあるのは、天国か地獄か。

それはきっと、神のみぞ知る。

意識が遠のいていくカンナの目から一筋の涙が零れ、頬を濡らした。