部屋の中は灯油の匂いで溢れている。

「よーし、全部終わった~!」

スマホの画面をタップし終えて大きく伸びをする。

計画は予定通りに進んだ。

もう里子ちゃんの両親は里子ちゃんに会えたかな……?

どうか天国では幸せに暮らせますように。

そう心の中で祈りながらソファに腰かけてテーブルの上の手紙を手に取る。

桃ちゃんがくれた手紙。

封を切り、二つ折りの便せんを開く。

【カンナちゃん ずっと友達でいようね】

桃ちゃんの言葉に喉の奥から嗚咽が込み上げる。

幼稚園時代、桃ちゃんがくれた手紙にも同じことが書かれていた。

その文字からは12年越しの桃ちゃんの覚悟と決意が伝わってきた。

「ありがとう、桃ちゃん。ありがとう……」

涙が溢れた。ママが亡くなってから泣いたことは一度もない。

涙を拭いて封筒の中に便せんを戻そうとしたとき、まだ何かが入っていることに気が付いた。

「なんだろう……」

それを引っ張り出した時、カンナは声を上げて泣いた。

それはママとカンナだった。

幼稚園の運動会で、一緒に手を繋いでダンスをしているカンナとママ。

「ママ……ママぁ……」

眩しいほどの笑顔を浮かべているママにボタボタとカンナの涙が落ちる。

「ママ、ごめんね……」

天国にいるママはカンナがイジメ返しすることなんて望んでいなかっただろう。

でも、カンナは許せなかった。

イジメという卑劣な行為で相手を傷付ける人間が。

「ちゃんと償うから。悪いことをしたら罰を受けなきゃいけないもんね」

ポケットの中から取り出したライターにそっと親指を添える。