汚い布団の上で寝転ぶ。
視界に映るのは天井から垂れ下がった埃にまみれた薄汚い照明器具。
変色している壁紙、布団の周りに散乱するゴミ。
これがあたしの現実だ。SNSの世界を失ったあたしにはもう残されているものなんて何もない。
目をつぶるって想像する。
キラキラとしたものに囲まれて楽しく豊かな暮らしをする自分の姿を。
ああ、もう何も考えたくない。
万引きがバレたことも、カンナにハメられて店員をケガさせたことも。
美波に裏切られてバッグを売られたことも。
SNSの投稿が大炎上し、あたしだけでなく家族全員が追い詰められていることも。
全部なかったことになればいいのに。
少し眠ろう。心も体も限界だった。
そう思っていた矢先、何かが割れたようなものすごい音がした。
カッと目を見開いて弾かれたように立ち上がり音のした方へ駆けだす。
「そんな……!」
キッチンの流し台の窓が割れている。
流し台には拳ほどの大きさの石が落ち、辺りにはガラスが散乱している。
全身を恐怖で震わせながら窓の外と見ると、割れたガラスの隙間から男が顔をのぞかせた。
「いやあぁあぁああああーーーーーー!!!」
あたしは絶叫した。
腰が抜けてしまったのか、ヘナヘナとその場に座りこみ立つことができない。
部屋にスマホを置いてきてしまったことを悔やむ。
窓に鉄格子はない。
「いいねぇ、その顔。怖がってる顔、そそられるよ」
男がニヤリと笑う。虫歯だらけの真っ黒い前歯。男が左手を割れた窓の隙間に差し込み、鍵を回した。
「いや、いや……お願い、来ないで……」
「そんなに怖がらないで。優しくするから。ねっ?」
男が扉を開けて土足のまま入ってくる。
「いや、いや、いやぁあああぁぁああーーーーー!!」
絶叫して這いつくばったまま必死に男から逃げる。
「いやだいやだいやだいやだ!!!!」
心臓が爆発寸前まで高鳴る。恐怖で全身が強張る。
頭の中で危険を知らせるサイレン音が鳴り響く。
『類は友を呼ぶって、本当なんだねぇ。さすがは美波ちゃんのお友達』
『やっぱり、蛙の子は蛙だな』
ギュッと目をつぶると、涙が溢れた。
あたしはどこで何を間違ってしまったんだろう。
ジャリッというガラスを踏む音が背後でした。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!」
なぜ謝っているのか自分でもよくわからない。
そのとき、ふとカンナの言葉が脳裏を過った。
『悪いことをしたらちゃんとごめんなさいって言わないといけないんだよ?どうしてそれが言えないの?』
あたしは誰かに謝ることなどしない人生だった。
その結果が、これ……?
男があたしの足元でぴたりと止まった。
「もう逃がさないよ?」
男がその場でうずくまるあたしの肩を抱いて耳に吐息交じりの息を吐きかけた瞬間、あたしは圧倒的な絶望と恐怖に声を出すこともできなかった。
男が覆いかぶさってくる。
その瞬間、今まで何の気なしに行ってきた自分のひどい行いが走馬灯のように頭を過った。
視界に映るのは天井から垂れ下がった埃にまみれた薄汚い照明器具。
変色している壁紙、布団の周りに散乱するゴミ。
これがあたしの現実だ。SNSの世界を失ったあたしにはもう残されているものなんて何もない。
目をつぶるって想像する。
キラキラとしたものに囲まれて楽しく豊かな暮らしをする自分の姿を。
ああ、もう何も考えたくない。
万引きがバレたことも、カンナにハメられて店員をケガさせたことも。
美波に裏切られてバッグを売られたことも。
SNSの投稿が大炎上し、あたしだけでなく家族全員が追い詰められていることも。
全部なかったことになればいいのに。
少し眠ろう。心も体も限界だった。
そう思っていた矢先、何かが割れたようなものすごい音がした。
カッと目を見開いて弾かれたように立ち上がり音のした方へ駆けだす。
「そんな……!」
キッチンの流し台の窓が割れている。
流し台には拳ほどの大きさの石が落ち、辺りにはガラスが散乱している。
全身を恐怖で震わせながら窓の外と見ると、割れたガラスの隙間から男が顔をのぞかせた。
「いやあぁあぁああああーーーーーー!!!」
あたしは絶叫した。
腰が抜けてしまったのか、ヘナヘナとその場に座りこみ立つことができない。
部屋にスマホを置いてきてしまったことを悔やむ。
窓に鉄格子はない。
「いいねぇ、その顔。怖がってる顔、そそられるよ」
男がニヤリと笑う。虫歯だらけの真っ黒い前歯。男が左手を割れた窓の隙間に差し込み、鍵を回した。
「いや、いや……お願い、来ないで……」
「そんなに怖がらないで。優しくするから。ねっ?」
男が扉を開けて土足のまま入ってくる。
「いや、いや、いやぁあああぁぁああーーーーー!!」
絶叫して這いつくばったまま必死に男から逃げる。
「いやだいやだいやだいやだ!!!!」
心臓が爆発寸前まで高鳴る。恐怖で全身が強張る。
頭の中で危険を知らせるサイレン音が鳴り響く。
『類は友を呼ぶって、本当なんだねぇ。さすがは美波ちゃんのお友達』
『やっぱり、蛙の子は蛙だな』
ギュッと目をつぶると、涙が溢れた。
あたしはどこで何を間違ってしまったんだろう。
ジャリッというガラスを踏む音が背後でした。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!」
なぜ謝っているのか自分でもよくわからない。
そのとき、ふとカンナの言葉が脳裏を過った。
『悪いことをしたらちゃんとごめんなさいって言わないといけないんだよ?どうしてそれが言えないの?』
あたしは誰かに謝ることなどしない人生だった。
その結果が、これ……?
男があたしの足元でぴたりと止まった。
「もう逃がさないよ?」
男がその場でうずくまるあたしの肩を抱いて耳に吐息交じりの息を吐きかけた瞬間、あたしは圧倒的な絶望と恐怖に声を出すこともできなかった。
男が覆いかぶさってくる。
その瞬間、今まで何の気なしに行ってきた自分のひどい行いが走馬灯のように頭を過った。