「それはもう無理。だってあのバッグはもう買われたものだから」

「……え……?」

「フリマアプリに出したら即売れだったの。結構人気のバッグなんだね。あのバッグの価値をあんまりよく知らなかったし、自分の物じゃないから相場より安く出しすぎちゃったかも?」

「嘘でしょ……。まさかコンビニに行くって……それって……」

ゴクリと唾を飲みこみ、スマホを痛いほど耳に密着させる。

「あははははは!!そうそう!大当たり。ま、そういうことだから今から発送してこないと。じゃーねー!」

美波は嬉しそうに笑うと、一方的に電話を切った。

手からスマホが汚い布団の上に転がり落ちる。

呆然と一点を見つめていると、ふいに涙が零れた。

どうして……。どうしてこんなことに……?

今日、何度そんなことを考えただろう。

震える手でスマホを掴み、自分の本アカを見る。

投稿は更にエスカレートしている。もうこのアカウントはあたしの物ではない。

ただ、SNSの世界で輝きたかったのに。

それだけなのに……。

もう終わった。すべてが終わった。

あたしのアカウントが水着の女性で埋め尽くされる。

ああ、もう終わりだ。

あたしは持っていたスマホを掴み、思いっきり部屋の壁に投げつけた。

ガシャンっという音の後、画面が蜘蛛の巣状に割れたスマホがあたしの元へ跳ね返ってきた。