イジメ返し3

必死になってフォロワーを増やしたあたしのアカウントが訳の分からない誰かによって汚されるなんて許せない。

それはあたしを汚されているようなもの。このアカウントはあたしそのもの。

あたしの存在価値そのものなんだから。

ふざけんなよ。絶対に許さない。

リロードして新しい写真が投稿されていないか確認したそのとき、新しいコメントが書きこまれた。

【フォロー外します。裏アカでやってたこと全部バレましたね。拡散されていますよ~。写真も加工だらけだし。マジ騙された。西沢砂羽最悪】

「は……?裏アカ?」

確かにSNSのアカウントは複数所持しているし、裏アカと呼ばれる愚痴や悪口専用の呟き用のアカウントもある。

でも、それとあたしの本アカを繋げるものはないはず。

顔を強張らせながら自分の悪口用の裏アカを確認する。

「なんでよ……!なにこれ……!!」

あたしのある投稿にコメントが殺到し、炎上している。

【今、軽トラックの運転手に大声で卑猥な言葉をかけられたんだけど!マジ死ね!みんな注意して!♯変質者情報!♯拡散希望♯気を付けて!】

歩きスマホをしていたとき、軽トラの親父に注意されてカッとなって軽い気持ちで車の画像とともにアップした。

車の側面には親父の会社の名前や電話番号が載っているのを知っていてあえてその写真をのせた。

炎上させたかったから。SNSを使えば、あたしではなく見知らぬ第三者が親父に鉄槌を下してくれると思っていたから。

【この投稿でおじさんの会社ヤバいらしい。電話ひっきりなしに鳴って仕事にならなくておじさん病んでるみたい】

【これ、目撃者いるんだっけ?歩きスマホしてた女子高生が注意されて嘘ついたってこと?】

【女子高生が嘘ついたっていう証拠が後ろの車のドラレコにあるって!窓開けてたから音声ばっちりみたい】

【この会社の中の人間です。今、法的準備中。お前の嘘で人生も会社もボロボロにされかかってる人がいるんだよ!マジで覚悟してろよ!】

【車の窓ガラスにスマホを構えてうっすら映ってる女子高生が犯人か。スマホカバーで特定できない?】

【あの付近の高校何個ある?以前の投稿とか探したらすぐ特定できるっしょ!】

【はい。特定。西沢砂羽。高校三年 SNSアカウントはこれ→】

【やべー!砂羽ちゃんの本アカ乗っ取られてる!誰だよ!仕事早すぎ!】

【西沢砂羽、高校3年生 両親+砂羽の3人家族。アパート暮らし。住所知りたい人はすぐに調べられると思う。本アカの位置情報をチェック!←一応悪用は禁止です(笑)】

顔中の筋肉という筋肉が震えた。

「まさか……あの投稿が原因……?」

安易な気持ちで投稿したのに、まさかそれが自分にブーメランのように帰ってくるなんて考えてもいなかった。

「どうしよう……」

体中がブルブルと震える。とんでもないことをしでかしてしまったかもしれない。

あたしの投稿は目にもとまらぬ速さで拡散されていく。

フォロワーが激増し、コメントが殺到する。

喉から手が出るほど欲しくてほしくてたまらなかったフォロワーとコメントなのに今はそれが恐怖でしかない。

【西沢一家知ってる。結構有名な不正生活保護受給者だよ。両親ともにパチンカス!今も打ってるんじゃね?やっぱり、蛙の子は蛙だな】

【不正受給通報は●●市役所 生活保護課第1係 電話番号は×××ー×××ー××××まで。午前9時から午後5時まで】

あたしのたったひとつの投稿からここまで特定されてしまうなんて思ってもみなかった。

それどころか、両親の不正受給すらも暴かれてしまいそうな事態に陥っている。

そのとき、誰かがどんどんっと玄関を叩いた。

あまりの恐怖に体を丸めて耳を塞ぐことしかできない。

「ひっ……!」

今度は連続でチャイムを鳴らす。耳に甲高いチャイム音がこだまする。

「砂羽ちゃーん、そこにいるのは分かってるんだよ~!出てきなよ~!」

すがる思いで両親に電話をかける。でも、二人のスマホはどちらもすぐに留守番電話に切り替わってしまった。

やっぱり……そうとしか考えられない。

騒ぎに気付いた両親はあたしを見捨てて我先に逃げたのかもしれない。

ドンドンドンっと更に誰かが扉を強くたたく。

「やめて……!やめてよ!!」

あたしもここから逃げなくちゃ……。アパートはすでに大勢の人間に知られてしまっているし、ひとまずどこかへ逃げなくちゃ。

でも、資金は……?お金がなければ漫画喫茶にもホテルにも泊まれない。

そのとき、ハッとした。そうだ。あのバッグがある。

万引きしたあのバッグを売ればそこそこのお金が手に入る。