イジメ返し3

必死の思いで家に辿り着くと、アパートの周辺にはスマホ片手にうろつく男性がポツリポツリと目についた。

ゲームでもやっているんだろうか。

不思議に思いながら男性の横を通り過ぎた時、ふいに男性が顔をあげた。

「あっ、君、西沢砂羽ちゃんだよね……?」

「……はいっ?」

誰こいつ。男はあたしをマジマジと見つめた後、虫歯で真っ黒になった前歯をむき出しにしていやらしい下心丸出しの笑みを顔面に張り付けた。

「へぇ~、実物もまあまあ可愛いね。僕はもう少し幼い顔の子がタイプだけど、この際どちらでもいいか」

「……何……言ってんのよ……」

寒気がする。男がどうしてあたしの名前を知っているのかも、アパートの近くにいたのかもさっぱりわからない。

「人違いだから」

フンっと男を無視してアパートの階段を駆け上がり、玄関を開ける。

玄関には靴がない。両親ともにどこかへ出かけたんだろうか。

今日は保護費の支給日ではないはずだ。

不思議に思いながら自分の部屋へ向かい、カバンに放り投げてポケットからスマホを取り出す。

「チッ、やっぱり……」

先程駅ビルで撮られてしまった動画は数人がSNSにアップしていた。

それはものすごい勢いで拡散されていく。

でも、その動画のほとんどが遠くから撮影されたものだ。

顔だって鮮明には映っていない。大丈夫だ。これなら特定されるわけない。

ほんの少しホッとして胸を撫で下ろしてから自分のSNSのアカウントを開く。

「……は?」

自分のページを開いてログインできない。

今までこんなことは一度もなかった。

パスワードを間違った……?けれど、何度パスワードを入れても弾かれてしまう。

なんで……?どうして急に……?

仕方なくユーザー名で自分を検索した瞬間、あたしは全てを悟った。

「乗っ取り……!?」

あたしのアカウントに覚えのない写真が複数投稿されている。

あたしではない誰かの首から下の水着の写真や男性を誘うポーズをする写真。

「なにこれ、マジでなんなの!?」

写真の投稿と一緒にパパ活や友達募集や恋人募集までしている。

それだけでなく、♯一夜限り♯今すぐ会える人♯会いに来てとハッシュタグまでつけて。

ハッとした。アパートの周辺をうろついていた男たちはこの投稿を見たに違いない。

誰が一体こんなことを……!投稿を削除したくてもパスワードを変更されているせいですぐには出来そうもない。

でも、どうしてこの投稿であたしのアパートの位置まで特定できたの……?

「まさか……」

普段は自分の身元などを知られないように位置情報をOFFにして投稿している。

でも、この写真を投稿したときの位置情報を乗っ取った相手がONにしたんだとしたら……?

あたしの情報は筒抜けのはずだ。

でも、どうしてあたしの名前を……?頭の中が混乱する。

必死に思考を巡らせても、焦りばかりが募る。

どうしたらいい?どうしたら……!