イジメ返し3

ボロいアパートの一室のカギを開け、部屋に足を踏み入れる。

しばらく生ごみを放置している。

ゴミ袋から流れ出たカップラーメンの汁で床はベタついていた。

それを避けながら足の踏み場もない廊下の突き当りにあるリビングに入ると、母は合皮のはがれた安物のソファの上に寝転びながら首だけを動かしてこちらに視線を送った。

「おかえり。早かったねぇ」

「また昼寝?そんなことしてるから夜眠れなくなるんじゃないの?」

「そんな冷たいこといわないでよ。お母さんはれっきとした病歴がついてるんだから」

「あっそ。お父さんは?」

「パチンコじゃない?」

これ以上言葉を交わすのが面倒で、床に散乱するゴミを足で蹴散らしながら自分の部屋に入る。

この部屋の中は自分だけのテリトリーだ。

万年床の布団の上に座り、スマホを取り出す。

尊敬してやまない人のSNSの投稿をチェックする。

最新のバッグ、センスの良いピンヒール、キラキラ光るネックレス。

「いいなぁ……」

画面の中の世界に羨望のまなざしを向ける。

そして、ふと視線を持ち上げてため息をつく。

この人たちとあたしの違いは一体なんだ。

壁紙があちこちはがれ、茶色く変色している壁。

毛羽だった畳の上に惹かれた薄汚い布団。

ハンガーラックにかかったほこりのかぶったプチプラの洋服。

唇を噛む。

バッグから取り出した財布の中身を確認する。

「ヤバいなぁ」

こんなんじゃいい写真が撮れないじゃない。

財布を握り締めて大きなため息をつく。