「カンナちゃんのお母さんはカンナちゃんがそんなことしているなんて知ったら悲しむよ?そんなこと望んでない。カンナちゃんのお母さんが望んでいるのはカンナちゃんの幸せだよ」

「そうかもしれないね。きっと天国にいるママに会ったらカンナは怒られちゃうと思うなぁ。でもねぇ、カンナは何があってもこのイジメ返しだけは成功させなくちゃいけないの」

これがカンナにとっての最後のイジメ返しになる。

これを成功させられるなら、今までのすべての代償を払う覚悟はできている。

カンナにはもう何も失うものなどないんだから。

「ダメ……!そんなこと、絶対にさせないよ!そんなことしてたら身をほろぼすことになる。私にとってカンナちゃんは大切な友達だから……。だから……」

必死にカンナの腕を掴む桃ちゃん。

「――覚えておいてねぇ~?たとえ桃ちゃんだとしても、カンナの邪魔をするなら容赦しないから」

桃ちゃんの手を振り解くと、カンナは教室へ足を踏み入れた。

背後で桃ちゃんがカンナを呼び止める。

それを無視して自分の席に座る。

次のターゲットは砂羽だ。

無自覚に人に迷惑をかけて傷付けるその根性をカンナが叩き直してあげる。

「悪い子には罰が必要だもんねぇ」

ポツリと呟くと、カンナはまだ空席の砂羽の席をジッと見つめた。