イジメ返し３

１２年前、カンナと美波、そして桃ちゃんは同じ幼稚園に通っていた。

年長で３人が同じクラスになると、美波は大人しい桃ちゃんを徹底的にイジメた。

それは幼稚園児がするものとは思えないほどに陰湿で執拗なイジメだった。

カンナは桃ちゃんと常に行動を共にした。

すると、美波の行動はエスカレートし、ついには桃ちゃんを滑り台から故意に突き落とした。

歯が折れてしまい血を流して泣き叫ぶ桃ちゃんを助けようとしたとき、カンナは誤って美波にケガをさせてしまった。

病院に運ばれたものの、美波は特に大きなケガなどしていなかった。

それなのに、美波の両親はあれこれと理由をつけてはカンナの家に金銭を要求してきた。

カンナのおじいちゃんは土地をたくさんもつ地主で、パパは議員だった。

パパの立場を悪用して、ママを間に挟んでパパを脅しにかかった。

美波も、美波の両親もモンスターだ。

ママを精神的に追い詰め、そしてそれに耐えられなくなったママは自殺という道を選び自ら命を絶った。

カンナはこの世で一番大切だったママをアイツらに奪われた。

泣いて泣いて、涙も枯れた時ようやく気付いた。

このまま泣き寝入りなどできないと。

目には目を、歯には歯を。

神様などあてにならない。この世は不公平なことだらけだ。

警察はママの死を自殺と断定し、捜査などはしなかった。

警察が捕まえてくれるのは、目に見える傷を体に付けた場合だけ。

心はどんなに壊されても、その証拠がなければ動いてくれない。

もし仮に、心を壊されている証拠を示せたところでもう遅い。

証拠が集まる頃には心をボロボロにされ、生きていくことすら困難になってしまう。

ママは心を壊された。

それなのに、アイツらは何の不自由もなく毎日を生きている。

悪い人が楽しく生きていく、そんな理不尽なことは許されない。

でも、それを誰が罰してくれるというの……？

そんな人はいない。警察も司法も神様もあてになどならない。

だから決めた。カンナがやり返す、と。

ママをイジメて自殺に追い込んだアイツらにカンナができることはやり返すこと。

徹底的に。もう二度と立ち直れないぐらいの痛みと苦痛と後悔を味わわせてやる。