それから、すれ違う旅人もおらず、我らはのんびりと草原を進んでおった。するとシレアが前方の空を見上げておる。

「いかがした」

 空に小さな影が見える。鷹であろうか。

「ワイバーンだ」

「ほほう。こんな所にもおるのか」

 ドラゴンの眷属であるワイバーンは人語を解すことは出来ぬが、飼い慣らす事は可能である。

 王都には十数匹のワイバーンがビーストテイマーに調教されておるという。その背に乗る者は風騎士(ウィンドナイト)と呼ばれ、誰からも尊敬される。

「乗った事は」

「無い」

「乗りたいか」

「毒が欲しい」

「そっちか」

 呆れたものだ。普通であればあの背に乗り、空を駆けたいと思うであろうに。