息を深く吸い込むと、目を見開いて剣を抜いた。

「なんと優美な」

 激しさもなく流れる剣先となめからな動きは、まさに舞のごとく優雅でいて刃(やいば)の鋭さを無くすことなく展開される。

 これほどの剣舞を我は見た事がない。薄汚れた旅人の服である事がなんとも勿体なきことか。

 その容貌が端正であるがゆえ、ことさらに衣服を見て残念でならない。

 剣舞は重要な鍛錬の一つであり、己の技量を見定めるのには丁度良い。舞えばどれだけ己が成長したかが解るのだ。

 微々たる変化でも、全体の流れを大きく変える。

 一つ一つの動作は、舞う者の闘いに対する姿勢を現す。それを見る者の感情は、そのまま舞う者の強さであるのだ。

 美しく、鋭く、そして時には雄々しく。それでいて隙が無い。

「なんとも豪胆(ごうたん)よの」

 剣舞を終えて汗の滲む額を手で拭い、腰を落とすシレアに我がそう申すと、

「お前には負ける」

 のうのうと言い放ちおったわ。