「あ…じゃあ、このパンケーキで」
わけがわからないままメニューのパンケーキを指さすと、辻先生は軽くうなずいた。
「俺のおごりで良いよ」
「な…そんなの悪いです!」
さらりとおごる発言をされて、あわてて首を振る。
辻先生は、良いから、と笑った。
「先輩に良いかっこさせてよ」
……ずるい。
そんな風に言われてしまったら、断れない。
「……ありがとう、ございます」
無理やり断るのも失礼な気がして頭を下げると、辻先生はテーブルの隅に置いてあった呼び鈴を押した。
音が鳴るとすぐ、店員さんがやってくる。
「ご注文がお決まりでしょうか」
さっきの店員さんよりは年上だろうけど、私よりは若そうな女の店員さんが、にこりと笑って聞いてきた。
辻先生が、私の言ったパンケーキを1つ注文する。
「…え、辻先生は良いんですか?」
私の分だけ頼んで、以上です、と言った彼に尋ねると、辻先生はうん、とうなずいた。
「俺そんなに甘いもの好きじゃないから」
……”大人の男の人”ってかんじ。
もしここにいるのが流風なら、自分の分もちゃっかり頼んだだろうし、そもそもおごってくれることがありえないだろう。
流風はたまに子供っぽいところがあるから。
「…そうなんですか」
流風は確か甘いもの好きだったな、てゆーか流風に嫌いな食べ物なんてあるのかな。
なんて、ここにいるのは辻先生なのに。
……私今、すごく失礼なことしてる、よね。


