移ろいゆくもの、変わらないもの

                         








席について店員さんが行ってしまうと、学校にいるときは私にかけらも興味を示さなかった辻先生が、じいっと私を見てきた。


「……えっと、何ですか?」


さすがに気まずくて、そう聞いてみる。

辻先生は、いや、と言葉を濁したあと、窓の外へ視線を移した。


「……女って、可愛いとか綺麗って言えば落ちるもんだと思ってた」



……!?


予想の斜め上から投げ込まれた衝撃の言葉に、思わず固まる。


「え、な、えっ?」


突っ込みたいところはいろいろあるけど、まず、さっきまでの辻先生と雰囲気が違うような。

さっきまでは、ただにこにこした優しい王子様系の人だったはずなんだけど…。

王子様系でも、なんだか冷たい印象はあったけれど、今はそんな生優しいものではない。


声もワントーンくらい低くなってるし、笑顔を浮かべなくなったその顔は、恐ろしいくらいに整っているせいか、近寄りがたい雰囲気をかもしだしている。


「つ、じ先生……ですよね?」


辻先生なんだろうけど、さっきとおんなじ人だとはどうしても思えなくて聞くと、彼はこくりとうなずいて私を見た。


「さっきまでのは、女の人ならこういうキャラが好きなんだろうなっていうのを想像して。初対面だし、これから俺、君の教育係なわけだし、上手くやってかなきゃって思ったから」


でもさ、と辻先生が笑う。

王子様のような笑みじゃなくて、人間らしい、自然な笑顔だった。


「普通の女だったら落としてる自信あるのに、君は全然そんなかんじしなくて。だからやめたわ、あのキャラ」


「な、なんですかそれ…」


演じてたってこと?嘘ついてたんだ。


そんなの酷いです、と言おうとして、あわてて口をつぐむ。



──私も、おんなじだ。



あの子なら、どんな言葉を望むのかな。

あの子の前では、こんな風にしてよう。



嫌われるのが怖くて、人によって態度を変えてしまうのは、私もおんなじ。



好かれたいから。


ただそれだけの思いで、私は自分を演じてた。