移ろいゆくもの、変わらないもの

                         









連れられてきた教室に、そっと入る。

昔と少しも変わらないその風景は、どこか私を安心させてくれた。


「ここがHR教室」


そう言いながら、古びた教卓に右手をつく辻先生。

すらりと背が高く、顔が整っているせいか、それだけでさまになっている。

私はぐるりと教室を見渡し、笑みを浮かべた。


「なんか、懐かしいです。こういうの」


中学生に戻ったみたいな、そんな、不思議な気持ち。


退屈な授業では、窓の外を眺めていたっけ。

流風は私の前の席だったから、プリントを回されるのが毎回楽しみだったな。



窓から覗く景色はもう、昔とは全然違うけれど。




「……天海先生の担当教科は、英語だったよね」


不意に投げかけられた質問に、半ば反射的にうなずく。

辻先生は、俺は数学だよ、と笑った。


「とりあえず今日は学校紹介をって言われてたんだけど、出身校ならなんとなくわかる、かな?」


「あ…はい」


ちょっと曖昧な部分もありますけど、と付け足せば、だいたいわかれば良いから、と返される。

それから辻先生が、少しだけ首を傾げた。


「もう終わりで大丈夫だけど、天海先生帰る?」


来た意味あるのか、と思ってしまうほどにあっさり、終わり宣言をされる。


それじゃあ流風からのお誘いを断った意味がなくなってしまうではないか。


あんなに嬉しいお誘いを断ったんだから、ぜひそれなりの報いは欲しい。


私は、えっと、と辻先生を見た。


「…私、行きたいところがあるんです」


もし暇なら、付き合ってくれませんか?


私の言葉に辻先生が、少し驚いたように目を瞬く。



それから彼は、曖昧に笑ってうなずいた。