「天海先生はこの学校の卒業生だっけ?」
いつの間にか”先生”呼びになっている。
それが何だか嬉しくて、思わず笑顔がこぼれた。
「あ、えと、はい。そんなことまで知ってるんですね」
あわててうなずいてみせる。
辻先生は、にこ、と笑った。
「俺、君の教育係だから。いろいろ知らされてるんだよね」
優しい笑みなのにどこか嘘くさいのはやっぱり、作った笑みだからだろうか。
そうなんですか、とだけ返し、一歩先を歩く辻先生の背中を追う。
狭い扉から校舎に入ると、あちこちに汚れの目立つ、懐かしい靴箱に着いた。
「天海先生のときも生徒少なかった?」
私の方を見ないまま、マニュアル通り、とでもいうように質問してくる辻先生。
「あ、はい。1学年1クラスでした」
1クラス20人。それが3学年──3クラスだから、全校生徒は60人。
知らない人はいないくらいに、少ない人数だった。
そっか、と呟くように答えた先生が、足を止めて振り返る。
「今はもっと少なくなっててさ。1学年10人。さすがに少なすぎるから、3学年合わせて1クラスにしてる」
え、そんなに、と思わず声がもれる。
辻先生は、軽くうなずき、寂しげに笑った。
「だんだん生徒も少なくなってきてるし、たぶんいずれは廃校になるだろうって言われてるよ」
──廃校。
当たり前だ。こんなに人数が少ないんだもん。
もう数年経ったら、きっと。
私が通っていた、この学校は。
みんなと過ごした、流風と過ごした、この学校は。
なくなって、しまうかも、しれないんだ。


