玄関で挨拶しようとした先生に

「主人が中で、待ってますから…」と

優しく微笑みながら…スリッパを勧めるお母さん。

何だか……ホームドラマみたい……。

こんな普通の家庭の一コマが…家でもあるんだぁ。

………嬉しくて……涙が出ちゃうよ。

ウルウルして前がボヤける、唯の頭をそっと撫でながら

「今はさすがにぎゅっと出来ないから…
涙は我慢してね。」って…笑ってた。

リビングに着くと

四人掛けのソファーに座ったお父さんが

向かいの席を、先生に勧めた。

「失礼します。」

お父さんの横には、いつも座っていたように

お母さんが座ってる。

ご飯を食べた後、テレビを見ながら寛いでいたままの位置に。

胸の中に……熱いものが込み上げてきた。

「もう、この子は。
いつまで経っても……泣き虫さんで。……はい。」

エプロンのポケットから出てきたのは……ガーゼのハンカチ。

泣き虫な唯が…いつ泣いても良いように、ポケットに入れていた。

擦っても赤くならない、柔らかいガーゼを。