飛行機の中。

珉珠は珍しく、一条とのことを聞いて来た。

ゆっくりと由弦史を聞いたことがなかったからと。

なぜ会社を立ち上げていながら、それを手放したのか。

その答えに由弦は、完全燃焼、燃え尽き症候群だと答えた。

目標を達成していまうと、その後とてつもない虚無感に襲われる、成功してとても嬉しいはずなのに、なぜか切ない。

頑張っても、誰も褒めてくれない、褒めてくれた人はもういない。

だから何をやっても、実感が湧かないと由弦は話した。

その答えに対し、「だったらこれからは私が褒めてあげる!いつも傍であなたを見守って、褒めてあげる」と珉珠は言った。

珉珠の言葉は、由弦の中に深く染み入り、胸をじんわりと温かくさせた。

「あ!褒めるなら、エトワールを褒めてあげて?エトワールがオレの記憶を蘇らせてくれたんだ」

「そうなの?それならまた角砂糖をあげないと」

「うん!だからまたエトワールに会いに行こう?で一緒に森を散策しよう」由弦は珉珠と約束した。

由弦が記憶を取り戻した話は、一条から聞いていたが、あえて珉珠は由弦に聞いた。彼の口から聞きたかったから。

記憶を取り戻した時の話をする由弦の手を握りながら、切なげな表情で珉珠は聞いていた。

時折、俯いたりして、その時の由弦の気持ちを汲んでいるかのようだった。

「私は、何を思ってあなたが大丈夫だなんて思ったのかしら。こんなにも苦しんでいたのに。傍にいるべきは、あなただったのに。眠ることさえままならないあなたに……本当にごめんなさい」

「もういいんだ、今こうしてあなたと一緒にいるから。オレは幸せだよ」

珉珠が由弦の頬に触れた。

以前のように目を伏せることなく、珉珠を見据えた由弦。

信頼を取り戻した証。

珉珠は由弦の肩にもたれると、由弦も頭を寄せた。

韓国は雪が降っていた。