「何なら、今からでも一緒に来るか?いや、一緒に帰ろう」
慶太は強引に由弦を連れて帰った。
アトリエに着いてすぐ、雅羅が由弦の姿に気付き、驚きながら慌てて出迎えた。
「元気にしていたの?体は大丈夫?あなたにとても会いたかったのよ?」
由弦の顔色を伺いながらも、笑顔を見せる雅羅がそう言った。
服装から見ても、贅沢していないと分かった。
中に通され、
―――― オレに会いたかった!?
不思議思う由弦に、
「謝りたくて……謝った所で許されるなんて思ってはいないけど、でもきちんと顔を見て、ほんとに、ごめんなさい」
雅羅がそう言った。
思い悩む表情の由弦。
そこに弦一郎もやって来た。
「由弦、おかえり」
その言葉は、父と過ごしてきた中で、一番心を揺さぶり胸を締め付けた。
「ただいま……」
身も心も傷付いていた時に過ごした部屋を、由弦は見渡した。
何もないながらも、雅羅らしく、部屋を飾りつけしていた。
「持って来たもので飾り付けしただけだから」
雅羅が苦笑いした。
「何もこんな所で住まなくても、十分ホテル暮らしできるだろうに」
由弦は素直に疑問をぶつけた。
「お前の気持ちを少しでも知ろうと義母さんが言い出したんだ、母なりの愛情と思ってやってくれ」
弦一郎が申し訳なく言った。
「オレは……オレはどう返していいか分からないよ」
慶太だけでなく、父と義母の態度の変わりようにも、困惑する由弦は、切なげに言った。