由弦は不愛想に、二人に無言でお茶を入れ差し出した。
避けながらも、こうやって珉珠にもお茶を入れてやる孫の姿を見て、椿氏は可愛らしく思い、クスッと笑った。
「体の具合はどうだ?どうしてるか顔を見に来たんだ」
「ありがとうございます。具合もだいぶ良くなってます」
「そうか。時には部屋を出て、散歩したりしなさい。一人でいると、ろくな考えが浮かんでこないだろう。それは体にも良くない。外に出て風に当たり、自然に触れて気分転換でもしなさい。改めて季節も感じるだろう。それと、たまには実家に顔を出しに帰って来なさい」
優しく微笑みながら、椿氏はお茶を飲んだ。
「はい、分かってます」と由弦。
「うん。さて、孫の顔も見たことだし、私はそろそろ帰るとしよう。青木さん、由弦を頼みましたよ。それでは。あぁ、見送りはいいからね、外に人を待たせているから」
「えっ!?そんな!もう?」思わず立ち上がる由弦。
その言葉に、二人の会話を黙って聞いていた珉珠も驚いた。
椿氏は気を利かせて帰って行った。
呆気に取られる由弦と珉珠。
取り残された二人、少し気まずくなる。
由弦は何気に、痺れた右手を摩った。
それを見て、
「痛むの?」
と心配そうに、由弦の顔を見上げた珉珠。
「今日のように曇った日は、体が不調なんだ」
それを聞いて、思わず珉珠は由弦を横に座らせ、手を取り摩り始めた。
「……!!な、何だよ!そんな手でオレに触らないで!触る相手間違ってる!」
そう言って珉珠の手を振り払って、顔を背けた。
それでも珉珠はまた、由弦の手を取って摩り出した。
「離せよ!兄貴に抱かれた手でオレに触れるな!兄貴と一人の女を共有するつもりなんてない!!」
由弦は珉珠から思いっきり手を振り払った。



