珉珠は次の日もやって来た。
けど、由弦は部屋に入れることはなかった。
次の日も、また次の日も、根気よくやって来た。
二、三日で諦めるだろうと思っていたが、今度の珉珠は諦めが悪かった。
深追いしないタイプなのに、それに長年、慶太の側でやって来て、自分の感情など表に出さないと思っていたのに、今までの珉珠からは考えられなかった。
いや、自分に対して、本気で向き合っていると感じていたし、それは由弦にも伝わっていた。
分かっていたが、由弦も引くに引けず意地になっていた。
—————— 絶対に会わない!オレをこんな体にした男と、結婚しようとしていたんだから!
憎しみの気持ちの方が大きかった。
こんな毎日を繰り返し、ある日を境に珉珠は来なくなった。
なんで当然、「やっと諦めた、大したことねぇな!」なんて由弦は思っていた。
いつものように、うなされて朝を迎えた。
何だが頭がどんより重い。天気は曇り空。
こんな日は決まって、朝から頭痛と手足が重怠く、神経痛に悩まされる。
毎朝、毎日日課のように、窓の外を眺めていると、ドアを叩く音がした。
ドアの近くまで行ってみると、
「私だ、由弦開けてくれないか?」
椿氏の声だった。
由弦は慌ててドアを開けた。
すると、椿氏の後ろから、珉珠が顔を覗かせた。
―――― ……っ!!
それに驚く由弦。
珉珠は手段を変えた!
真っ向から行ってもダメなら、斜め方向から行ってみる戦法!
椿氏が由弦の所に訪れる際、合わせて行くようにする、それなら確実に由弦は扉を開けると踏んだ。
珉珠の方が一枚上手だった。
「彼女とは、来る途中で偶然会ってね?年寄りに、ここで立ち話をさせるつもりか?」
と珉珠をフォローする椿氏。
渋々二人を中へ通す由弦。



