漢江のほとりで待ってる


「ごめんなさい……」

「!?」

美桜の謝罪に不意を突かれた珉珠。

「ユヅを取り戻そうとして、青木さんから奪ったり、ユヅのお兄さんのこと相談したり。私が二人の間をめちゃくちゃにしちゃって」

「……もう過ぎたことよ。過去より今、これからが、その先が大事。前を向かないと」

自分に言い聞かせるよ言うに珉珠は言った。

「はい」

「一つ聞いていいかしら?」美桜に問いかける珉珠。

「……!?」その言葉に、珉珠の顔を覗き込んだ美桜。

「由弦とは、いつ別れたの?」

美桜は改めて大きな溜息を吐いた。

そして、

「青木さんが、ユヅのお兄さんと婚約した時です。その時、テレビでも二人の婚約が大々的に報道されてて、それ見てユヅ、暴れたんです。手が付けられないほど。テレビも壊しちゃって。そのあと、〝別れよう……〟って。意識が回復してから、改めて私を見ても、ときめかなかったって」

「……」

「つまり、記憶がなくても、青木さんのことはずっと好きだったってことですよ。心は忘れていなかった証拠ですね」

それを聞いて珉珠は、胸をえぐられるような思いがした。

—————— 青木さん、今好きな人……

あの日の病室での由弦の言葉を、また思い出した珉珠。

最後まで聞いていれば、聞いてあげていれば、こんなにも彼を傷付けることはなかったはずなのに。

本当のことを言ってさえいれば、少なくとも、こんなまどろこしいことなんてしなくて済んだはず……珉珠は思った。

「教えてくれてありがとう」

珉珠は切なげに笑って言った。

それから、由弦に会いに行く気持ちは、決意に変わる。