一つ一つゆっくりと絵を堪能した珉珠。
椿氏のお陰で、パワーをもらい少し元気になった気がした。
由弦に会いに行こう、この時素直に思った。
それから珉珠は、画廊から出て、その建物の階段を下りて、通路に差し掛かった。
歩いて行くと、少し前にあるベンチに座り、ふくらはぎを叩く女性が目に入った。
よく見ると、それは美桜だった。
高いヒールで歩き回ったりして、浮腫んだ足をほぐしていた。
「美桜さん!?」
珉珠は声を掛けた。
その声のする方を美桜は見た。珉珠の姿に驚いた。
聞くと、そこの美術館(画廊)に、受付や監視員として、働いていると言う。
もちろん、椿氏が由弦の祖父であることは知らない。
珉珠は気分転換のため絵画鑑賞に来たと話した。
美桜はすぐに、彼女が由弦の絵を見に来たんだと分かった。
「足疲れるでしょう」
美桜の足を見ながら、珉珠は美桜の隣に座って言った。
「はい。仕事はそんなハードではないんですが、監視員の時は座りっぱなし、展示物によっては立ちっぱなしの時もあって、ヒールだと余計に疲れますね」
美桜はしんみりと答えた。
「ブランド物のヒールは見た目も綺麗だし、女性の足元を美しく見せてくれるけど、その高さは、立ち仕事や動き回ることが多い足には不向きなのよね」
珉珠はふっと笑って言った。
美桜は珉珠の足元を見た。
彼女の靴は、程よい高さのあるヒールで、デザインも素敵で、足元だけが目立っているわけでなく、今日の服装にも、またその足にもしっくりとハマっていた。
美桜の視線に気付き、
「中はクッションになっていて、足当たりも柔らかくて、足裏も痛くなるのを軽減してくれるの。かかとの部分も柔らかい素材にされていてフィット感もある、靴擦れも起こしにくかったり。色んなメーカーが、機能性を重視していて、最近のパンプスって動き回る女性のために考えられてるのよ?デザインだってブランドにも劣らない」
つま先を上げ興味を引かせた。
「ほんと、何だか素敵。私のよりはるかに楽そうだし」
「よかったら、今度一緒に靴を選びに行きましょう」
「はい!」
美桜は満面の笑みを浮かべて元気に答えた。
自分は一人っ子で、何だか姉が出来たように思えた。



