「どうせグローブにも何か仕掛けてたんじゃないんですか!」

「念には念を……」渋い顔で慶太が答えた。

「副社長最っ低!!」

仲里は怒りを露わにした。

その場の雰囲気は気まずくなった。

「だから、企業からデザイン画の依頼が来ても、断り続けていたんだな。そんっなことも気が付かなかったなんて」

ひざまずいたまま、弦一郎はそっと呟いた。

その時、由弦の手を握る、珉珠の手に反応があった。

「……!?由弦!?」

由弦は夢の続きを見ていた。

いきなりの車の急ブレーキ音とぶつかる衝撃、水の中に沈んで行く自分。

それが何度も繰り返される。

—————— づる……ゆづる!由弦!?

遠くで誰かが呼んでいる。

「うぁ~」

少し息が上がった状態で由弦は目を覚ました。

「由弦?分かる?」

珉珠が顔を覗かせる。

虚ろな目をしていた由弦は辺りを見渡し、珉珠や他の者の顔を認識すると、

「何で!何でここにいるんだ!」

「みんなお前を心配したんだぞ!」不安に顔を覗かせる慶太。

「助けなんて望んでない!何で死なせてくれなかったんだ!!母さんが待ってるんだ!」

由弦は暴れ出した。

慌ててみんなで抑えつけた。

「離せ——————っ!離せよ!」

暴れる由弦に鎮静剤が打たれた。

しばらくすると、目ははっきりと開かれ、意識もしっかりしているようだった。