狂ったように珉珠は何度も由弦の名前を呼ぶ。

その勢いで自分も飛び込もうとした。

慌てて、一条や仲里達に押さえられる。

「離して!!早く助けないと!」

「分かってる!分かってるから落ち着いて!」

仲里が懸命に止める。

「由弦が!由弦を助けて!」

仲里の腕で珉珠が崩れ落ちる。

一条も辺りを見渡しながら、必死で方法を探る。

雅羅もどうにもできず、ただ珉珠に寄り添う。

この時期、漢江のライトアップは二四時間だったが、橋の下は暗くてあまり見えない。

そんな張り詰めた不安の中、漢江沿いがバルーンライトの点灯でいきなり明るくなった。

橋の下を見ると、一つの救命ボートに、ウェットスーツをまといエアタンクを担いだ人が数名乗っていた。

そのボートが何艇も浮かんでいた。

「橋の下を重点的に探せ!南側もだ!」

無線で指揮するのは、慶太だった。

まるで、シンクロナイズドスイミングでも見ているような、それぞれ、綺麗にバックロールエントリー(背面から着水すること)で水に入っていった。

多くの人数で広い範囲まで捜索された。

真夜中の水の中は暗いくて、ほとんど見えない。

ヘッドライトが由弦とダイバーの命の綱。

ダイバーの一人が浮き上がって来て、

「い、いたーっ!いましたーっ!」

すでに、ぐったりした由弦は引き上げられ、その場で素早い措置が行われ、待機していた救急車にそのまま運ばれて行った。

飛び込んでから、約三十分後、由弦は見つかった。