漢江のほとりで待ってる



「なぜですか!」慶太は弦一郎を睨みつけた。

「ならなぜ由弦はあんなことをしでかしたんだ!考えたことがあるのか!あの子から全てを奪った上に、青木君まで。由弦の堕ちていく姿を見て楽しんでいたのか!お前はそこまで腐っているのか!」

「ええ!楽しかったですよ!あいつの醜態晒した姿見てたら、この上なく体に快感が走るくらいだった!」

それを聞いて、弦一郎はまた慶太を殴った、さっきよりも強く。

「今のお前では由弦には勝てない!お前は戦う相手を間違えた。それに仮にも兄弟だぞ!あの時!意識のない由弦のそばでお前は言ったな!間違っているなら叱ってほしいと!ならそれは今だ!お前は間違っている!事故のことを忘れたとは言わせないぞ!お前は罪を償う所か罪を重ねたんだ!それは私も同じだ。由弦の気持ちも考えず、何でも勝手に話を進めていたんだからな」

弦一郎の言葉に、そのまま崩れ落ちる慶太。

「慶太さん!」雅羅は寄り添った。

「一からやり直そう、慶太。一から」

「父上……」泣き崩れる慶太。

初めて父親から殴られた。

今まで以上に父を近くに感じた慶太。

高柳家の親子劇の最中、やはり珉珠だけはちゃんと由弦の誕生日を覚えていた。

自分の部屋で、返せなかったペアウォッチと、渡せるはずもない今日のプレゼントを、二つそこに並べて置いて大切に持っていた。

いつか渡せる日が来ると信じて。

「お誕生日おめでとう、由弦」

プレゼントを眺めながら珉珠は呟いた、由弦が行方をくらましたとは知らず。