漢江のほとりで待ってる


由弦の社長就任を喜ぶ者もいる中、本社や高柳グループ全体では、ころころと代表が変わることに混乱と不安が広まっていたのも事実。

この騒ぎに一番心配をしていたのは、仲里だった。

由弦が病院にも行かず、恨みに力を注いでいたことに心配した。

—————— このまま手術を受けないつもりなんだろうか?そのまま放っておけば死に至るかもしれないのに!

気持ちがどうにも落ち着かず、仲里は由弦に電話をした。がしかし繋がらなかった。何度やっても同じだった。

更に不安が募る。

仲里は頼みの綱、一条に連絡を入れた。

一条もまた心配していたと言う。

弦一郎と慶太を解任まで追い込むことは予見出来なかったとも言った。

連絡が取れない、嫌な予感がした。

その日の夜、二人は由弦のアトリエに行った。

明かりが灯されていないのを見て、すぐに由弦はいないと分かった。

一条は焦った。

「あいつが行きそうな所は……?もしかして、いや違うな」

一条は、由弦の母との思い出の場所を思ったが、すぐにバレることはしないだろうと、そこは外した。

色々と勘を働かせたが、焦りのためか雑念が湧き、集中出来ない。

二人は由弦のアトリエで足止めを食らっていた。

「青木さんに聞いてみては?」

「いや、彼女は知らないはずだ。もう高柳のことに関わらせてはいけないと思う。高柳が望まないと思う。それに彼女は結婚するんだから」

「結婚できますかね。こんな時に。もしそうなら青木さんのこと見損なう」

「人それぞれ考えがあると思う。出直そう。とりあえず帰ろう。何か分かったらまた連絡します」

と一条は仲里に言った。

それに従う仲里。

二人は別れてからも、由弦の行きそうな場所を探した。