「慶太さん、由弦さんもまだ記憶すら戻ってないうちに、帰っても来ていないのに、不謹慎よ!」
「そうですけど!世間は待ち焦がれていると思うんです!立ち直った人間のサクセスストーリーを。それに純愛を貫いた、素晴らしい響きではありませんか!」
「慶太!忘れるな!罪は罪だ。それは一生消えることはない!それを背負いながら生きて行くのが罪滅ぼしだ。お前の償いは始まったばかりだぞ!」
「はぁ~、分かってますよ!そんなこと!だから私は青木君と結婚をするんです!彼女の苦しみを少しでも軽くしたい!誰かの力になりたい!誰かのために生きたい!そう思ってるんです」
「慶太さん、それは違うわ。あなたの思い上がりよ?あなた自身の罪を償わないと……人の気持ちを無視してはいけないわ。人の痛みを分かる人になってほしい!トップに立つ人間になろうと思うなら尚更。あなたの目の前にいらっしゃる、お父様のようになってほしいの」
「母上!?私に青木君を諦めろと言うのですか?」
「諦めるのではなく、彼女を自由にしてあげなさい!もうこれ以上誰も傷付けてはいけない!」
「母上~!私は誰の気持ちも無視してはいないです!」
納得の行かない慶太だった。
「では由弦さんの気持ちは?あなたが結婚することで、由弦さんが傷つくと思わなかったの?」
「あいつは今、記憶がないのですよ?」
「戻ったら?青木さんのこと思い出したら?あなたが奪ったって事実を知ったらどうするつもり?それに青木さんの気持ちは?由弦さんが入院している間、二人を見ていて何も感じなかったの?」」
「珉珠君自身が選んだことです!それに彼女はもう由弦のことは何とも思っていませんよ。でなきゃ私と結婚なんて約束しない」
「慶太さん、あなたは何も分かっていないのね?どうして青木さんが由弦さんのことを思ってないなんて言えるの?全てのことを考えて決断した女心が、どうしてあなたには分からないの!」
「母上こそ何が分かるんですか!」
「分かります!女だから!それに、私達のようなことになってほしくないの!お願いだから、彼女を利用しないで。会社のためならまだしも、世間の期待に応えるような、くだらない理由で結婚をするなら止めておきなさい。まして、自分の欲望のためだけなら、それこそするべきではないわ!不幸しか生み出さないから」
雅羅の言葉に、みんな息を飲んだ。
慶太は、由弦の気持ちが分からない訳ではなかった。
また由弦を恨んでいる訳でもない。
ただどうしても、一度消えていた、珉珠への執着心が燃え上がり抑えきれなかった。
あの由弦から奪い返した、そう思うと体全身が震えた。
抑えきれない欲望が、彼の中に溢れていた。



